2018年3月1日(木)15時00分から党本部にて、「民進党」大塚耕平代表の定例会見が行われた。
■冒頭発言
○参院予算委 「働き方改革」の問題点について質疑
【代表】
ご承知のとおり、安倍さんが、今国会での労働法制の見直しにおいて、裁量労働制の対象範囲拡大は盛り込まないことを昨晩決断し、きょう予算委員会で私も冒頭そのことについてお伺いしました。
取り下げは衆議院での野党各党の質疑の結果とも言えますが、ある意味、当然なるべくしてなった展開だと思います。
考え方もさることながら、その正当性の根拠にしていたデータが極めてずさんなものであり、間違いもいっぱいあったということですから、これはもう取り下げて当然。顔を洗って出直してこいという話だと思います。
それを受けて、きょう予算委員会を聞いていただいたかと思いますが、私が申し上げたかったのは、高度プロフェッショナル制度も一体どういう考えで、どういうデータ的根拠に基づいて導入しようとしているのかというのは、これはしっかり議論していかなければいけない。
裁量労働制の対象範囲拡大とはちょっと違いますが、ただ、聞いていてくださった記者の皆さんがご理解いただけていれば幸いですが、俗に言う「残業代ゼロ」制度ですから、この高プロの対象になる人には残業代が払われない。しかし、申し上げたかったのは、今でもそういう人たちはサービス残業を余儀なくされて、その中で仕事をしている人がいっぱいいる中で、本人の同意が必要とは言うものの、そういう制度を導入することの不合理性はデータの面から洗っていかなければいけない。
もう一つ加えて申し上げますと、そもそも我が国では、何やら「日本の勤労者の労働生産性が低い。労働生産性が低いからGDPが増えない。経済成長しない」かのごとく、財界と一緒になって政府・自民党はそういう主張をしていますが、日本人の労働生産性が低いというデータ的合理性はかなり怪しげなものであるということをきょう申し上げたかったわけであります。これはもう聞いていただいた同僚議員や他党の皆さんもこれからその点をどんどん追及していってもらえればありがたいなと思っておりますが、私も機会があれば、他の委員会も含めて、しっかり議論していきたいと思っています。
最後に、茂木さんや総理に伝わったかどうかわかりませんが、日銀総裁は、「2年間でマネタリーベースを2倍にすれば、物価上昇率が2%になり、デフレも脱却して、経済は好循環に至って経済成長する」と言っていたのが、5年たってマネタリーベースを4倍にしても全くその兆候が見られない中で、今度は根拠なく「労働生産性の上昇率を2%にする」と言っているわけです。だから「2%の悪夢」と言ったわけでありますが、反応が鈍かったなと思って質疑をしておりました。
■質疑
○経済政策「All for All」について
【フランス10・及川局長】
「連合フォーラム」で井手英策先生が講演され、連合会長が「週刊金曜日」のインタビューで井手先生の「All for All」を野党結集の軸にしたいということをおっしゃっていた。井手先生の「All for All」という経済政策について、どのようにお考えになるか伺いたい。
批判として、立命館大学の松尾匡教授が3点、「All for All」の問題点を言っている。
1点目が、本来負担するのは富裕層であり大企業だと。
そして、「みんなで支える」というのは疑問だと。その理由として、現実の社会は富裕層とそうでない人に二極分化していると。
3点目が、日本を一つの共同体とみなす安倍さんと、「みんなで支える」という「All for All」は似ているとおっしゃっていた。
【大塚耕平代表】
まず、「All for All」というのは、ある意味、民主党時代、そして民主党政権時代に我々が主張していたことの延長線上にある政策の枠組みだと思います。それは、いろいろご批判もありましたが、消費税をああやって引き上げるお願いをし、下野してまでああいう決断をし、そして社会保障を充実させていくというのは、まさしく財源は広く薄く集めさせていただいて、そして必要な社会保障は的確に行っていくと。これを、全く一緒ではないですが、少し表現を変えて組み立て直すと「All for All」になります。
「All for All」は、皆さんもご承知のとおり、中低所得者層の皆さんにも負担できる範囲で負担していただくということが前提で、しかしそのかわりに、困ったときには今以上にしっかりサポートが受けられるという枠組みです。
そういう意味でいうと、松尾さんのご主張はちょっと僕は熟知していないのですが、負担は富裕層がするものだという、そういう単純な割り切りではない主張が「All for All」ですし、実際富裕層だけで本当に負担し切れるのかというと、それはなかなか難しいからこそ「社会保障と税の一体改革」という話になったわけです。
2番目の、富裕層とそうでない層と2分化されているというのは、それは今、相対的貧困率の中央値のデータなどを見ているとまさしくそういう傾向が出ているので、「All for All」の結果としてかつての日本のように分厚い中間層が復元すれば一番いいわけですが、今いきなり分厚い中間層を復元できないのでこういう政策が出てきているわけですから、2点目はそう考えるべきでしょう。
安倍さんの言っている日本は一つの共同体というのとは、かなり主張的には異なると思います。
今回の労働法制の、きょうの議論やきのうの決断に至る過程でもおわかりのとおり、安倍さん的に言うと、まさしく取りやすいところから取る。ないしは、文句を言わないところには余計なプロフィットは提供しないで、企業収益を高めて、そこから法人税収を得ればいいという発想かもしれないけれども、得た法人税収が社会保障に回っていくわけでもない。
皆さん気がついたかどうか。時間がないので十分説明し切れなかったのですが、実質GDPというのは資本と労働と全要素生産性のコブ=ダグラス生産関数で示されるというのがあのパネルの下に書いてあった式(「国内総生産(GDP)=(1-α)資本投入*α労働投入*全要素生産性」 αは労働分配率 労働分配率が下がる時は資本投入が多ければGDPが増える)なのですが、資本に係る係数は「1-労働分配率」、労働に係る係数は「労働分配率」だから、安倍政権で労働分配率が下がっているにもかかわらず実質GDPが上がらないというのは、要するに資本投下が少な過ぎるからなのです。なぜならば、内部留保は全部キャッシュで貯めているか、海外に投資しているから。
安倍さんの主張が、ここのところを改善しないで、共同体で取りやすいところから取って、文句を言わない人にはプロフィットを提供して、この枠組みも「All for All」と一緒だとは、とても理解できない。松尾さんのおっしゃる3点目がどういう内容かわかりませんが、かなり違うと思います。
○憲法論議 9条3項自衛隊明記論について
【「フランス10」・及川局長】
日経新聞の2月7日の朝刊に、憲法学者の井上武史先生が寄稿され、憲法9条3項に自衛隊を明記することの問題点を二つ挙げていた。
1点目が、国民投票で承認された自衛隊は、憲法制定時に国民投票を経ていない既存の国家機関、例えば衆参両院、最高裁判所などよりも高い正統性を有することになる。これが一点。
もう一点が、自衛隊が憲法上の組織となれば、法律で設置されるにすぎない防衛省は自衛隊の下位機関となる。これはもっともな指摘だなと思った。
大塚代表に改めて、いわゆる3項に自衛隊を明記する自民党案の問題点について伺いたい。
【大塚耕平代表】
今おっしゃった二つの点については、参考情報としてお伺いしておきます。
1項・2項維持、3項に明記という点については、これも11月の代表質問で聞いて、実はきょうもそのことも場合によっては聞こうかなと思っていたのですが、何しろその立法事実があるかないかということです。総理は、自衛隊を書き入れても「何も変わらない」とおっしゃったわけですから。何も変わらなければ、我々も自衛隊は合憲の立場だし、与党も合憲の立場ならば、これを書き込む立法事実がないわけでありますので、やはりその主張の正当性に欠けると思っています。
取材&文:酒井佑人(ゲイレポーター)
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