日本プロサッカーの前監督・ヴァヒド・ハリルホジッチ氏が4月27日、日本プレスセンターの大ホールにて記者会見を行った。会場は立ち見が出るほどの報道関係者であふれた。
会見冒頭でハリル氏は
「この日本という素晴らしいお国を私自身、初めて体験してまいりました。そしてこの私どもが家族とともに大好きな日本というお国でございますけども、やはりそこには伝統が、歴史が、そして文化が、そしてまたさまざまな習慣というもの、それに加えましていろいろな仕事のやり方というものがあり、それを大いに評価しているわけでございます。いろいろなものを敬いながらやる。こうした日本というお国。
そして私自身はこの日本という大変素晴らしいお国に参りましたのは、観光客として、物見遊山で来たわけではなく、やはりもしかしたら私のこの手で、この日本という国のサッカーに、何かをもたらすことができるのではないかという気持ちで来たわけでございます」
と、日本についての感想を述べた。また、サッカーチームの統制については、
「毎週月曜日になりますと、こうして全員のスタッフとミーティングを持ちました。そして実際にテクニカルスタッフとともに、そうですね、50人ほどの選手についての1人1人の報告書というものを作っていって、それプラスアルファとして、いわゆるゴールキーパーの5人、6人についての報告書を作り上げていったわけです。例えばメディカルレポートということになりますと、故障した選手がいるならばすぐ連絡を取って、どういう状況なのか聞いてみたりとか、ですからいろいろと広報、コミュニケーションのスタッフとも、それからまた何か問題があるときにはアドミンの、つまりは管理部のスタッフともいろいろと連絡を取ってきたわけです。そしてまた代表チームのためのいろんな合宿、遠征というものをいたしますが、そうなりますと、例えば合宿ということになりますと、じゃあいつその合宿をスケジューリングするのか、どういう形でそういった合宿というものをやっていくのかということで、スタッフの数にして50人ほどいたわけです」
「そしてこの3年前から私といたしましては、誰ともなんの問題もなかった。特に選手との問題はございませんでした。この3年間というのは、もう本当に常に、コンスタントにそうした選手たちと常に連絡を取り合っていた。つまりは海外組だろうと、また日本の国内組だろうと。もう何度も、そうですね、海外組の選手と電話で話したことでありましょう。そして国内組もそうです。ですからこうして連絡を取り合って、そしてまたコミュニケーションというものをずっとコンスタントに取り続けていたんです。そしてそれぞれが誰とどういう話をするのかということをちゃんと、ですからどのコーチにしましても、じゃあ誰とどういう話をしなきゃいけない、そしてどういったメッセージを伝えなくてはいけないということをきっちりと、かっちりとやってきたわけです」
と、スタッフと選手と密な関係を持ち続けた来たことをアピールした。
予選は首位で通過した
ハリル氏はそして、自身の実績を次のようにアピールした。
「予選は通過した。それもいわゆる首位で通過したわけです。われわれのいたグループというのは、それは大変なグループでもございました。でも皆さんの中には、いや、当たり前じゃないか、だって日本はいつも予選通過してきたんだからというふうにおっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんけど、そんな楽なことではございませんでした。で、守備にも攻撃にもベストでした。そしてそれも歴史に残るような試合もしたんです。それは、こんなの初めてだったんですよね。
初戦を落として、それで予選通過ができるチームっていうのは初めてだったんですね。オーストラリアに最初に勝ったんですから。もう全員がパニクっていましたよ。特に、ハリルは若い選手を起用するじゃないかといったときの皆さんのパニクりぶり。でもそれにもかかわらず、素晴らしい勝利というものを勝ち取ったんです」
ハリルホジッチ「UAEのチームに日本代表チームがアウェーで初めて勝った。そしてまた、もう1つ歴史的な勝利というのが対ブルガリア戦で、7-2で勝った。ええ、ヨーロッパのチームでそれほどまでの差をつけて勝つっていうのは、今までかつてなかったことだったんです。ですから本当にいろいろな意味で成功してきたことというのがこの3年間ございました。でもそれでもみんな満足できないということであるわけで、でも私自身は、いやあ、もう満足以上のものがありました。でも本当に難しいというような、そんなときだっただけに、私はこれだけできたということで満足しています」
4月7日に「ハリルさん、お別れすることになりました」
ハリル氏はワールドカップに向けた準備を次のようにして語った。
「ワールドカップのための調整にあって、そして自分が何を求めているかということは私自身ちゃんと分かっていた。そしてまた私自身もいろいろと満足もしていたし、それからまた選手についてのいろいろな情報データというものもゲットしていた。
そしてそこに、もう一番重要な、そしてその次に来るのが一番重要な23人の選手というものを選抜をするということになっていまして、そこでこういった問題というものが始まっていったわけです。いろいろな情報というものが私の耳にも入ってはきていたものの、私はあくまでも自分の仕事だけに専念をしていました。ただ、そのときにやるべき試合、そしてプレーになっていなかったということを言う人もいた。ですからこうした合宿をして、1か月調整をかけて、それでなんでこんなにも問題が出てこなくてはいけないんだろうか。そしてなぜ会長にしても、西野さんにしてもハリル、問題があるぞなんていうことを、なんで一度として言ってくれなかったんだろう。いえ、本当に一度として。そして何かちょっとあっても、誰もなんにも言わなかった。西野さんのほうが何か私に言おうとしていた」
つまり、西野朗現監督からも、田嶋幸三「日本サッカー協会」会長からも何の文句も指示もなかったと明かした。
そして、4月7日、パリで田嶋会長から監督解任の通告を受けたことを次のように明かした。
「4月の7日のことでした。会長のほうからパリへとお呼び出しがかかって、私はなんのことか分からず、ホテルのほうへと出向きました。そして、あ、こんにちは、こんにちはといって、そのあと腰掛けて、そしてハリルさん、これでお別れすることとなりましたというお話があったんです。最初は、え、ジョークだろって私は思ったんです。そして1分たって会長に、なぜかおっしゃっていただけますかって伺いました。そしたら、つまりはコミュニケーション不足。それによって私はそこでもっと怒りというものが沸き立ってきたわけです。そこで、え、どの選手と、どの人と? そしたら、いや、全般的にというお答えで、そしてその部屋からは5分たって出ました。
私はもう動転して、いったい何が起こったのか分からなくて、私と一緒にやってくれているコーチたちに電話をしたんです。1人はイングランドにいましたし、もう1人はドイツにいて、そこで試合の、うちの選手たちの視察をしていたんです。それで言ったんです。もううちに帰りなよ、終わったからなって。皆さん、このコーチたちの反応がどうだったかということはご想像ください。このように会長からそのお話をされたこと、そういう形で。そしてまたありとあらゆるこの3年間やってきたことに対しても。ですから私自身、監督をしている人間に対してのリスペクトというものがないのではないか。そして私と一緒にやってくれているこのコーチ仲間に対しての、やはり同じ思い。韓国戦のあとにやはり解任ということを考えたという話も聞きました。そしてそれだったら私だって少しは理解できます。つまりワールドカップよりも日韓戦のほうがいかに重要かということは私も分かっているからです」
サポーターにとっては監督解任は最悪の悪夢
冒頭発言30分のところを50数分もスピーチしたハリル氏にはサポーターから次のような質問が出た。
「サポーターとして記事を書いているものです。サポーターとして1つ質問させてください。ヴァヒドさん、僕らサポーターにとってもこれは最悪の悪夢です。あなたと共にワールドカップの本戦を戦いたかったです。日本サッカー界がこんなひどい状態に陥った際に僕らサポーターは、どう振る舞えばいいのかアドバイスが欲しいです。今まで3年間共に戦ってきた何十万人、何百万人という日本代表サポーターに向けてメッセージをお願いします。」
ハリルホジッチ ハリル氏は次のように答えた。
「私のように傷ついている方が多くいるというのを聞いて、このように励まし、サポートのメッセージをいただいたこと、今までありませんでした。日本だけではありません。本当に今まで日本だけでなく、こういったことというのはありませんでしたし、本当に深く傷つきました。なぜなんだろうという思いで、もう一度日本に参りました。ぜひ一緒に東京の町を練り歩いてください。
ハリル監督とか、ハリルさんだっていって、多くの方々に道端でも声をかけられてうれしい。すごくうれしいです。でも何が起こったんでしょうかとみんな質問してきます。私のほうから直接会長にも質問をしたいと思っているんですけれども、私の得意分野である最後の詰めというのを、仕事をさせてもらえなかったんですね。ワールドカップブラジル大会でもかなりいい監督だったと自負しております。ワールドカップ出場権を得られるこの日本でもいい仕事をしたと思っているんです。初めてチームと、日本代表と仕事をしてきたのにもかかわらず、この続きができない。ここからだというときに仕事ができなくなっちゃうわけです。
やはり非常に傷ついております。皆さんサポーターの方々と同じようにやはり深い傷を負っていますけれども、まだ答えはないです。でも本当にサポートしてくださってありがとうございます。心より感謝します。このように私をサポートしてくださる方が、こんなに大勢いらっしゃるっていうのは本当に今まで分からなかったかもしれません。まだ全部を語りきってないのかもしれませんが、一番素晴らしい試合、それはサポーターとの試合かもしれません。それに私はサポーターの心を得られたという、そういった勝利を収めたのだったらすごくうれしいことです。ありがとうございます」
「日本の永遠のサポーターです」
記者からは「監督自身悔しい思いはしていますが、ワールドカップで日本代表を応援しますか」という質問も出た。
ハリル氏は
「私は日本の永遠のサポーターです。いろんなことを混ぜることができない真っすぐな性格なので、今まで関わってきたチームそれぞれと、私は常に今まで関わってきたチームと親密な関係を築きたいし、ずっといつも私の忠誠心は、日本チーム、および多くの選手たち、スタッフたちに私はまだすごく心が通っていると信じていますし、みんなどのような事態でこういうことになったのかと分からないままです。
日本、ずっとこれからも頑張ってください。これは本当に心からの言葉です。みんな頑張って。これは、バイオリンって、リップサービスではありませんよ。私のことについて好きなだけいろんなことを言ってください。ただ、私のこの忠実な、真っすぐな、正直な気持ちは心からのものですし、それについては揺るぎないものだと思います。本当に今回、この事態のことを私はなんと申し上げたらいいんでしょうか。非常に心の残りです。どういうことなんでしょうか。
もう1つお願いがあります。個人的なメッセージになります、お許しください。チームの関わった全ての人たち、そしてサポーターにも先ほど感謝の言葉を申し上げたと思いますが、熊本県にも私、個人的にも感謝したいと思っているんですね。本当に特別なメッセージを直々に熊本県からもいただきました。ワールドカップ前に熊本に足を運ぶと約束したので熊本にも行きたいと思っています。こういう状況なので変わってしまったのですが。そして熊本県と約束したのが、試合ごとに熊本のバッジを着けるということでした。次回は私は観光客として熊本に足を運ぶことでしょう。
友達から聞かれます。君は日本に行くのかい。もちろん、絶対自信を持って次も日本に来れる。今までやってきたこと、仕事にしろ、一個人としても、非常に自分でも自分のことを言うのもあれですけれども誇りに思っています。私もそして私の家族も日本が大好きです。素晴らしいところを観光で見物させてもいただきました。北にはちょっと足が運べてないのが残念なんですが、まだ生きていますから。なのでまたお目に掛かりましょう」
世界では監督解任を批判する報道が多数
会見に出席していたサッカーに詳しいゲイレポーターの酒井佑人氏は次のように語る。
「ハリルホジッチ監督は世界でも名将として名を馳せていますから、日本の今回の電撃的な解任劇には欧州では批判するメディアが多い。ハリル監督は元サッカー日本監督のイビツァ=オシムさんと同じく旧ユーゴスラビア出身で、オシム氏とともに苦労人であるとともに厳しいけれど自己抑制のきいた人格者として知られています。現役選手後、選手時代の蓄えを元手に母国にて飲食店、衣料品店などの事業に出資するも、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争にて資産が消滅しました。地元チームの監督になるも紛争が激化してフランスに亡命しました。紛争で自宅が木っ端みじんに破壊されました。戦争の悲惨さを知るハリル氏はきわめて厳格な戦術家です。世界的に評価されている監督なのに、ワールドカップ2ヵ月前に、わけのわからない理由で電撃解任するなど、日本の恥を世界にさらすようなものです。残念でなりません」
ハリルホジッチ ハリル氏は日本で監督を解任されたものの、その優秀さから、近い将来、どこかのチームの監督になるであろう。
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